近年、金の価格が歴史的な高水準で推移しており、ニュースなどで耳にする機会も増えたのではないでしょうか。しかし、「なぜ金の価値が上がっているのか?」と問われると、明確に答えられる方は少ないかもしれません。
本稿では、金価格が変動する本質的な理由を、経済の基本である「需要と供給」から、世界経済を動かす「中央銀行」の戦略まで、初心者の方にも分かりやすく、かつ深く解説いたします。
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そもそも金の価格は何で決まる?経済の基本「需要と供給」
あらゆるモノの価格と同様に、金の価格も最終的には「買いたい人(需要)」と「売りたい量(供給)」のバランスで決まります。金の価値を理解する上で、この基本原則は非常に重要です。
買いたい人(需要)が増えれば価格は上がる
金の需要は、主に4つの分野から構成されています。近年は、伝統的な宝飾品需要に加え、投資需要と中央銀行による購入が市場を牽引しているのが特徴です。
▼ 金の主な需要分野
| 需要分野 | 内容 | 近年の動向 |
|---|---|---|
| 投資需要 | インフレ対策や資産防衛を目的とした地金やコイン、ETF(上場投資信託)などでの購入。 | 地政学リスクや経済の先行き不透明感を背景に、世界的に増加傾向。 |
| 宝飾品需要 | ネックレスや指輪などの装飾品としての需要。インドや中国が二大市場。 | 価格高騰の影響を受け、一部の地域では需要が減少する傾向も見られる。 |
| 中央銀行 | 各国の中央銀行が外貨準備の一部として金を保有するための購入。 | 新興国を中心に購入が活発化しており、価格の強力な下支え要因となっている。 |
| 産業用需要 | 優れた導電性や耐腐食性から、半導体や電子部品、医療分野などで使用。 | 技術革新とともに安定した需要がある。 |
楽天証券の分析によれば、2024年の世界の金需要は過去最高を記録しました。特に中央銀行の旺盛な購入と、個人投資家の力強い買いが全体の需要を押し上げています。
売りたい量(供給)が限られているから価値が上がる
金の価値を支えるもう一つの重要な要素は、その供給量に限りがある「希少性」です。金の供給は、主に鉱山からの新規産出と、市場に存在する金を再利用するリサイクルに分けられます。
鉱山からの金の産出量は、技術の進歩にもかかわらず、近年はほぼ横ばいで推移しています。これは、新たに大規模な金鉱を発見することが困難になっており、採掘コストも上昇傾向にあるためです。
▼ 金の供給の内訳
- 鉱山からの生産: 新たに採掘され、市場に供給される金。
- リサイクル: 既に保有されている宝飾品や電子部品などを溶かして再利用される金。
需要が世界経済の動向に応じて大きく変動する可能性があるのに対し、供給は急激に増やすことができません。この「需要は増えやすいが、供給は増えにくい」という構造が、金の価値を長期的に支える根源となっています。
【理由1】世界が不安定になると金が買われる「有事の金」
通貨や株への不安が「金」への信頼に変わる
「有事の金」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、戦争や紛争、大規模な金融危機など、世界が不安定な状況に陥った際に、安全な資産として金が買われる現象を指します。
株式や債券は、発行元である企業や国家の信用によって価値が担保されています。そのため、発行元が経営破綻したり、財政危機に陥ったりすると、その価値が大きく損なわれる「信用リスク」を抱えています。
一方で、金はそれ自体が価値を持つ「実物資産」です。特定の国や企業の信用に依存しないため、通貨や株式市場への信頼が揺らいだ時、資産の逃避先として選ばれるのです。歴史を振り返ると、オイルショックやリーマンショックなどの経済危機の際に、金価格が上昇する傾向が見られました。
専門家が解説:地政学リスクと金価格の連動性
近年の金価格の上昇は、地政学リスクの高まりと密接に関連しています。
▼ 近年の地政学リスクと金価格への影響
| 出来事 | 時期 | 金価格への影響 |
|---|---|---|
| ロシアによるウクライナ侵攻 | 2022年〜 | 欧州の安全保障への懸念から、安全資産としての金需要が急増。 |
| 中東情勢の緊迫化 | 2023年〜 | 紛争拡大への懸念が広がり、投資家のリスク回避姿勢が強まり金が買われた。 |
これらの出来事は、投資家心理を冷え込ませ、先行き不透明感を増大させます。このような不確実性が高まる局面では、ポートフォリオのリスクを分散させる目的で金を組み入れる動きが活発化する傾向があります。地政学リスクは、金が持つ「安全資産」としての価値を再認識させる重要な要因と言えるでしょう。
【理由2】モノの値段が上がる時に強い「インフレヘッジ」
お金の価値が下がると、金の価値は上がる
インフレ(インフレーション)とは、物価が継続的に上昇し、相対的にお金の価値が下がることです。例えば、昨日まで100円で買えたパンが、今日110円に値上がりした場合、同じ100円で買える量が減るため、お金の価値は実質的に目減りしています。
インフレが進むと、現金や預金の価値は時間とともに失われていきます。これに対し、供給量が限られている金は、通貨価値の下落の影響を受けにくく、価値が保存されやすいという特性があります。このため、金はインフレから資産価値を守るための「ヘッジ(回避)手段」として、歴史的に重要な役割を果たしてきました。
専門家が分析:インフレ率と金価格の歴史的データ
過去の動きを見ると、高いインフレ率を記録した時代に、金価格が大きく上昇した事例が確認できます。
✓ インフレと金の価値の関係
- インフレ発生: 物価が上昇し、通貨の価値が下落。
- 資産価値の目減り: 現金や預金の実質的な価値が減少。
- 金への資金流入: 価値の保存機能を持つ金に、資産の逃避先として資金が向かう。
- 金価格の上昇: 金の需要が増加し、価格が上昇する。
ただし、専門的な観点から見ると、インフレ率と金価格の関係は常に一定ではありません。近年では、次に解説する「実質金利」との関係性がより重視されるようになっています。
【理由3】銀行にお金を預けても増えない「低金利」
金利がつかない金の「弱み」が「強み」に変わる時
金は、それ自体が利子や配当を生み出すことはありません。これは、利息が付く預金や債券、配当が期待できる株式と比較した場合の「弱み」とされています。
通常、世の中の金利が高い局面では、人々はリスクの低い預金や債券で資産を運用する方が魅力的だと考えます。その結果、金への投資妙味は薄れ、価格は下落しやすくなります。しかし、世界的に金利が低い「低金利」の環境下では、この状況が一変します。
預金や債券の金利が極めて低い場合、利子を生まないという金の弱みはほとんど気にならなくなります。むしろ、他の資産との比較において、金の相対的な魅力が高まるのです。
専門家が解説:「実質金利」で見るのがプロの視点
金価格の動向をより深く分析する上で、専門家が注目するのが「実質金利」という指標です。
【重要ポイント】実質金利とは? 実質金利とは、銀行の預金金利などの「名目金利」から、予想される「期待インフレ率」を差し引いたものです。
計算式: 実質金利 = 名目金利 - 期待インフレ率
実質金利は、私たちのお金が実質的にどれくらい増えるか(または減るか)を示しています。例えば、名目金利が1%でも、インフレ率が3%であれば、実質金利はマイナス2%となり、預金しているだけでは資産は実質的に目減りしてしまいます。
実質金利がマイナスになる局面では、利子を生まない金の価値が相対的に高まり、資産の逃避先として金に資金が流入しやすくなります。近年の金価格を分析する上で、この実質金利の動向は極めて重要な判断材料となっています。
【理由4】世界の「中央銀行」が金を買っている
なぜ国の中央銀行が金を備蓄するのか?
近年、金価格を押し上げる非常に大きな要因となっているのが、世界各国の中央銀行による金の購入です。中央銀行は、自国通貨の価値を安定させ、金融システムを維持する役割を担っており、その準備資産(外貨準備)の一部として金を保有しています。
▼ 中央銀行が金を保有する主な理由
- 信用の裏付け: 金は普遍的な価値を持つため、自国通貨の信用の裏付けとなる。
- リスク分散: 特定の国の通貨(米ドルなど)に依存するリスクを減らし、資産を多様化する。
- 安全資産: 金融危機や地政学リスクに対する備えとなる。
世界の中央銀行は2022年、2023年、2024年と3年連続で年間1,000トンを超える歴史的な量の金を購入しており、市場における金の需要を強力に下支えしています。
専門家が読む:中央銀行の金購入が示す世界経済の潮流
特に近年、中国やインド、トルコといった新興国の中央銀行による金の購入が目立っています。この動きの背景には、より深い戦略的な意図があると分析されています。
その一つが、基軸通貨である米ドルへの依存度を低減させようとする「脱ドル化」の動きです。国際取引や外貨準備が米ドルに集中している現状に対し、地政学的な対立などを背景に、米ドル以外の資産として金の保有量を増やすことで、リスク分散を図っているのです。
中央銀行による金の購入は、単なる投資活動ではなく、国際情勢の変化や世界経済の構造転換を映し出す鏡と言えます。この長期的な潮流は、今後の金価格を占う上でも見逃せない重要なポイントです。
よくある質問(FAQ)
金価格は今後も上がり続けますか?
A: 専門家として断定的な予測は避けるべきですが、これまで解説した要因(地政学リスク、インフレ懸念、中央銀行の動向)が継続する限り、金価格は底堅く推移する可能性があります。ただし、金利の上昇など逆風となる要因も存在するため、多角的な視点が必要です。
初心者が金を購入する際の注意点は何ですか?
A: 金は価格変動リスクがある資産です。一度に全資産を投じるのではなく、長期的な視点で資産の一部を振り分ける「分散投資」が基本です。また、金地金、純金積立、投資信託など様々な投資方法があるため、ご自身のリスク許容度に合った方法を選ぶことが重要です。
円安は金の価格にどう影響しますか?
A: 金の国際価格は米ドル建てで取引されます。そのため、日本国内で円建ての金価格は、国際価格だけでなく為替レートの影響も受けます。円安になると、同じ1ドルの価値が円換算で上がるため、国内の金価格は上昇する要因となります。
金は利子を生まないのに、なぜ投資対象になるのですか?
A: 金が利子を生まないのは事実ですが、その価値はインフレや通貨価値の下落から資産を守る「資産防衛」の役割にあります。株式や債券とは異なる値動きをする傾向があるため、ポートフォリオ全体のリスクを低減させる効果が期待できるのが、投資対象となる大きな理由です。
まとめ
本稿では、金価格が上昇する4つの主要な理由を、専門家の視点から解説しました。
✓ 本記事の要点
- 需要と供給: 金の価値は、供給が限られている「希少性」と、投資や中央銀行による旺盛な「需要」によって支えられている。
- 有事の金: 戦争や経済危機など、世界が不安定になると、特定の国に依存しない「安全資産」として金が買われる。
- インフレヘッジ: 物価上昇でお金の価値が下がる局面で、資産価値を守るための有効な手段となる。
- 中央銀行の購入: 世界の中央銀行が「脱ドル化」などを背景に金の保有量を増やしており、価格の強力な下支えとなっている。
これらの要因を理解することは、金という資産を通じて、世界経済のダイナミズムを読み解くことにつながります。
本記事を通じて、金価格の変動の裏にある本質的な理由についてご理解いただけたのではないでしょうか。長期的な視点での資産形成を考える上で、金について正しい知識を持つことは、皆様の資産を守り、育てるための有効な選択肢の一つと考えられます。
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