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母の遺品整理で出てきた「金のネックレス」…形見分けでそのまま持ち帰って大丈夫?弁護士が教える「遺産」と「形見」の境界線

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母の遺品整理で出てきた「金のネックレス」…形見分けでそのまま持ち帰って大丈夫?弁護士が教える「遺産」と「形見」の境界線

亡くなった母のドレッサーから出てきた、指輪やネックレスなどの貴金属。「これはお世話になったお姉ちゃんに」「これは私が」と、その場の話し合いだけで持ち帰っていませんか? 日本には「形見分け」という素敵な文化がありますが、金価格が高騰している昨今、ただのアクセサリーだと思っていたものが予想外の高額資産となっているケースも少なくありません。あとから「遺産分割の対象だ」と親族間で指摘され、トラブルに発展するケースもあって……。本記事では、家族仲を壊さないための「正しい形見分け」のルールを弁護士の北畑素延氏が解説します。

「形見分け」と「遺産分割」は別物?法的なラインの有無

亡くなった母の指輪やネックレスも、財産的価値のある動産である以上、法的には相続財産として遺産分割の対象となります。理論上、亡くなった方の動産(ただし、祭祀財産を除きます。以下も同様です)すべてが、遺産分割協議の対象です。しかしながら、多数の動産、特に財産的価値のないものまで遺産分割の対象とするのは、現実的ではありません。

実際、相続人間で争いがなく、不動産等の価値の高い財産がない場合や、名義変更が必要ない場合は、形見分けを行うだけで相続が終わることもあります。

では、「形見分け」で相続が終わらせてよいものと、「遺産分割協議」が必要なものの線引きはどこにあるのでしょうか。結論からいえば、明確な法的ラインがあるわけではありません。

常識的な範囲ならOKだが、高額な金製品は「相続財産」として扱う

遺産分割調停において、対象になりやすい動産としてはまず「自動車」が挙げられます。そのほか、美術品や貴金属、刀剣類等といった高価な動産が対象となるのが一般的です。ただ、自動車以外の動産は、財産的価値が高いものを除いて、当事者で形見分けを行うよう調停委員から指摘を受ける場面も少なくありません。このような場合は、当事者や弁護士の立会いのもと、形見分けを行うこともあり、かくいう筆者も、形見分けに立ち会った経験があります。

では、亡くなった母の指輪やネックレスはすべて形見分けで処理していいかというとそうはなりません。

ここで、一つの基準として参考になるのが、相続税申告における実務の取扱いです。相続税申告の実務では、5万円を超える宝石や貴金属は、その動産ごとに相続財産と取り扱う必要があります。他方、5万円以下の宝石や貴金属は、家財道具一式として5万円で申告されることが多いです。

つまり、一定の価値があると思われる指輪やネックレスは遺産分割の対象と取り扱ったほうが無難といえます。

その指輪、実は高いかも?トラブル回避のための「とりあえず査定」

相続税の発生が見込まれる場合や、親族間で意見が分かれそうな場合は、指輪やネックレスを、とりあえず査定してみるのもトラブル回避のために有効と思われます。査定をしてみたところ、財産的価値がそこまで高くはなかった場合は、心置きなく形見分けとして処理できる公算が高いです。また、査定を行うことで、価値を知らないまま形見分けしてしまい、後で不公平感が生まれるのを防ぐ意味でも役立ちます。

兄弟姉妹間でも記録保存…スマホ等での簡単な自衛策

指輪やネックレスは大きな動産ではなく、持ち運びが簡単で、紛失や隠匿が起こりやすい財産です。また、年季の入ったものだと、被相続人である親のものなのか、それともほかの相続人のものなのか、わからないこともあるでしょう。特に、遺産分割調停等での裁判手続きで、これらを遺産の対象だと主張するには、指輪やネックレスが被相続人の所有物であり、現在も存在していることを証明しなければなりません。

そのため、被相続人の生前から、こまめに指輪やネックレスの存在をスマホ等で撮影し、その存在を客観的に明らかにしておくだけでも自衛策となります。可能であれば、母親本人に「これは誰のものか」といった一筆を書いてもらうのも効果的です。

遺産分割調停等での裁判手続きでは、指輪やネックレスが遺産であることを巡って遺産分割協議が紛糾したり、別途遺産を巡る訴訟に発展したりするケースもあります。この遺産を巡る争いは、遺産分割調停の枠組みを外れ、別途「民事訴訟」で争うという、時間もコストもかかる事態を招きかねません。また、指輪やネックレスが「特別受益(※)」の問題となり得る点にも注意してください。

※特定の相続人が被相続人の生前、被相続人から特別に受けた贈与など

遺す側ができる「争族」対策

遺す側として、被相続人ができる争族対策としては、高価な指輪やネックレスは購入時の書類や鑑定書とともに金庫等に保管したり、場合によっては、遺言を作成しておいたりすることが挙げられます。遺言により、「どのネックレスを誰に相続させるか」を明記しておくことで、のちの紛争予防には有効です。

故人の想いを大切にするため、少しだけ「値段」の話を

指輪やネックレス等の高価な動産は、預金や現金等とは異なり、一見してその価値がわかりづらいものです。特に、価値が高いものであれば、適切に税務申告する必要がありますし、遺産分割協議にその価値を適切に反映させるべきでしょう。相続人が価値を誤解した状態では公平な協議や手続きとはいえません。

「遺品を前に値段の話をするのは気がひける」と感じるかもしれませんが、相続人のあいだで、具体的な話し合いが始まる前にこそ、冷静に資産価値を確認しておくべきです。

これは被相続人となる方にとっても同様です。生前のうちに自分の財産の「価値」や「誰に譲りたいか」を家族に伝えておくことは、故人の想いを尊重しつつ、残された家族の絆を守るための準備といえるのではないでしょうか。

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